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「練習を継続しながら思考する」学習方法

このホームページの「生徒たちの物語」に出てくる元教え子さんたちは、自己流の学び方から脱して、「練習を継続しながら思考する」学習方法を素直に取り入れた人たちです。


代表的な2人の記事を以下に転載します。


  1. 塾に行かず、学校の授業だけで東大模試全国5位

中堅私立の中学高等学校の教員をしていた頃、東大に行きたいと言った中学3年生。

高校卒業まで4年間、英語の授業を持ち上がり、彼女は塾に行かずに学校の授業だけで着実に伸びていった。

高校3年で大手予備校の東大模試で全国5位に。その後、見事に合格。学校創立以来2人目、戦後初の快挙で学校は大騒ぎになる。彼女の背中を見て追いかけた同級生も、早慶などに合格し、前例のないクラスに。

彼女は東大入学後の英語クラス分けテストで最上位のクラスに入る。周囲を見渡すと、彼女以外は全員帰国子女だったそう。

​留学経験はないけれど、言われた通りにコツコツと勉強したら、ここまで上り詰めていた。


  1. 学力最下位の野球部が、隙間時間勉強で早稲田合格

中堅私立の中学高等学校の教員をしていた頃、早稲田に行きたいと言った高校1年生。

彼はクラスの全員からバカにされるほど勉強が苦手な野球部員で、朝から晩まで練習で疲れている。

彼に早稲田に行く方法を問われ、隙間時間でも可能な勉強方法を教えると、素直に実行。

「隙間時間勉強」しかしないので、2年生になっても周囲からはバカにされ続けていたが、あるとき模試でクラス最高得点を取ると、クラスは大騒ぎに。

「もう単語帳も文法問題集も1日で1周していて、模試で知らない単語は1つもなかった」という発言に、再度クラスは大騒ぎ。

​闇練の素振りのようにコツコツと他の教科も隙間時間勉強で効率化し、野球を続けながら念願の早稲田大学合格を果たす。



この2人に共通することは、練習を継続したことです。



「4番・スタメン」を希望するなら、相応の「素振り」をしているか?


私が授業で生徒に言うのは、「語学は音楽やスポーツと同じで練習が必要であること」です。

特に大学入試は、部活でいう「地方予選」なしの、いきなり「全国大会」に相当します。

クラスや学校内では「できる子」でも、全国にはもっと上位がいるわけです。

受験会場で隣に座っている人が、灘や開成の生徒かもしれない。


普段の練習をサボっているような野球部員が、「試合には出たいです。スタメンで。打順は4番でお願いします。」なんて言ったら、他の部員にバットで殴られることでしょう。練習しないのに強豪校に勝てるはずがない。

チーム競技だとチームメイトに迷惑をかけるだけです。

個人競技なら、本人が残念な思いをするだけです。


受験では、「勉強してないけど受験したいです。早慶あたりで。」という発言は、受験料を払えば誰でも可能ですが、世間ではそれを「記念受験」と言います。


受験では倒す相手は他の受験生ではありませんし、誰かを倒す必要もありません。

大学が想定しているボーダーラインを「受験生本人が」越えるかどうかです。

したがって、闘うとしたら他者ではなく、自分自身が対戦相手です。

克己心を持つこと。これは地道な練習を重ねる以外には身につきません。

書店には「~の裏技!」や「これだけ覚えればOK!」といった帯の受験参考書が並んでいますが、これで克己心は持てません。

そんな裏技や暗記で合格するなら誰もこんなに苦労しないはずです。


昔と異なり、近年の大学入試は知識そのものを問う問題が少なくなっています。

誰も知らない単語であっても、前後の文脈を考えたら推測できたり、近くにある言い換え表現を追跡できたりする「思考力」が問われています。この思考力は裏技でも暗記力でもありません。


地道な練習とは、地道に暗記に励むことではなく、地道に「考える」練習をすることです。

何も考えずにバットを振り回しても何の練習にもなりません。

これは他の部活でも同じですね。

何の練習なのかを意識しながらやることで、思考しながら練習することができます。


以下の自由英作文の問題は、暗記学習では太刀打ちできません。

多様な回答が考えられますし、これの解答例を暗記しても意味がありません。


21世紀に、世界を大きく変える原動力となるものは何であろうか。あなたが予想するものをひとつあげて、理由とともに70語程度の英語で述べなさい。
(大阪大学)


Googleマップに頼る受験生は、未知の道で遭難する


暗記や裏技は、目的地までの最短ルートを示すGoogleマップのようなもの。

ある目的地に行きたい時、今ならGoogleマップが道案内してくれます。

どのルートを通るか、どこで曲がるか、全てをガイドしてくれます。

しかし、この先長い人生を歩む受験生は、人生の道中で想定外に出くわすこともあるでしょう。

本番の試験(や人生)では、突然通信が途絶えたり、地図にない道が現れたりします。その時、「地図を読めるか?」「地図がなくても方角がわかるか?」「自分の足で歩ける筋肉を鍛えているか?」

人生では常にGoogleなどが手を引いてくれるとは限らないので、自力で目的地を目指せる能力を持っておく必要があります。


暗記や裏技だけの人は人生のイレギュラーに対応できるのでしょうか。

書店で「人生のイレギュラーに対処する裏技!」という帯の本を探し出して、それを暗記するのでしょうか。

考える練習をしてきた人は、その裏技に相当するもの、むしろ裏技以上の解決法を自力で導き出すこともできるようになるのです。


「目先の受験だけ乗り越えられればOK」と思うかもしれませんが、暗記と裏技で合格できる難関大学はありません。

難関大学は難関大学であり続けるために、安易な思考の受験生を排除するような入試問題を作成します。それも難問奇問を出すわけではありません。基本的なことを深く考える習慣があるのかどうかを見抜くような問題を出します。そのような出題者の意図を問題から読み取る必要があります。


空欄に共通する1語を答えよ。(慶應大・医)
  1. He left a note to the (  ) that he would not be coming back.
  2. Parents worry about the (  ) of websites on their adolescent’s behavior.
  3. She lay quietly waiting for the sleeping pills to take (  ).

1はイディオムを知っていれば分かりますが、もし知らなくても、2と3を考えると答えが分かります。よく考えて作られた問題です。



【実録】私が大手予備校講師の原稿に「書き直し」を命じた理由


以下の問題は、2007年度のセンター試験の問題です。この問題形式は2007年に初めて出題されたもので、2009年まで続きました。


次の問い(問1~3)において、話者が太字で示した語を強調して発音した場合、話者が伝えようとした意図はどれが最も適当か。それぞれ下の①~④のうちから一つずつ選べ。

What do you think about my summer plans?

  1. I already know what your friends think.

  2. I didn't understand what you just said.

  3. I know what you think about my winter plans.

  4. Your plans are good. How about mine?


この問題が面白いのは、強調されている単語を無視すれば、1~4の選択肢は全て「正しい内容」になるところです。


1を正解にするなら、「your friendsの意見は知っているので、君はどう思うか聞きたい」という含みを持つので、youが強調されているはずです。

What do you think about my summer plans?


2を正解にするなら、「君の発言が分からなかった」ので問い返していることになるので、Whatを強調します。

What do you think about my summer plans?


3が正解なら、「冬の計画はもう知っている」ことが前提になるので、「」はどうなのかを問うため、summerを強調します。

What do you think about my summer plans?


4が正解なら、「君の計画はいいとして、私の計画は?」と聞くので、myを強調します。

What do you think about my summer plans?


このように、「出題者から問われていることに答える」という当然のことを念頭に置いて思考する必要があります。暗記型の人は条件反射的に解答を出そうとするので、選択肢1の内容が英文に合っているので1を正解と答える可能性があります。それは出題者の罠に見事にハマったことになります。


ここで昔話です。

私は教材を作成する大手出版社で編集をしていたことがあります。

ちょうどこのセンター試験の問題が出た時に高校の副教材として使われるセンター試験対策問題集の担当をしていました。

ある大手有名予備校の先生が、著者として問題と解答の原稿を作成していました。

センター試験で上の問題が出題された後に受け取った原稿は、センター試験の出題意図とはかけ離れた、普通の内容一致問題でした。

そのため、「出題意図と異なるので原稿の書き直しをしてください」とお願いしました。

著者の先生は当時「売れてる有名予備校講師」だったので、私のような編集者ごときにボツを食らうのが気に入らないようでした。

「ウチの生徒は、この問題をやっている!」と言っていました。

その有名講師に教わっている予備校生だけが被害に遭うなら数はそんなに多くありません。しかし日本全国の高校で副教材として利用されている問題集となると、センター試験の出題意図と異なる問題を練習させられて困ったことになる生徒は全国で数千どころか数万人以上になります。

書き直しについて、その著者と何度かバトルした後、各大手塾・予備校がその年のセンター試験の出題傾向と分析の最終まとめを公表しました。

すると、全ての塾・予備校で上記の説明がそのまま発表されています。

それを著者に見せたらバトルが終わりました。

バトルで時間を無駄にしたので原稿締切が厳しくなり、「著者だけだと間に合わないから、君も原稿書いてよ~」と編集長に言われ、編集者の私が原稿の半分近くを執筆して間に合わせることになってしまいました。もちろん私に印税は入りません。

翌年、その著者との契約はありませんでした。



「出題者とのコミュニケーション」が、合格の扉を開く


この長い昔話の真意は、「試験会場で初めて目にする出題傾向の問題に遭遇した時、受験生が問題に向き合う姿勢はどうあるべきか」ということです。

その問題を通して出題者とコミュニケーションを図ることが求められます。

相手が見えないのにコミュニケーションなんて取れないと思うかもしれませんが、普段から思考する練習をしている人の目の前に問題があるなら、それだけでコミュニケーションは可能です。

過去問を演習する時は、見えない作成者とのコミュニケーションを意識すると、本番でも問題作成者の意図が分かりますし、どこに「ひっかけ」があるのかも見抜けるようになります。

暗記型の人が見たことのない問題に遭遇したら、「これは捨て問だ」として処理するかもしれません。

ここで大きな差が生まれるのは言うまでもありません。


考える練習をするというのは、最終的には遠回りではありません。

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